今回の銭湯は静岡県浜松市。駅から南へ10分ほど下った海老塚という民家の中にぽつりぽつりと個人商店が点在する町の「光輪湯」さんにお世話になります。
特徴のない建物だなあと感じる一方で、静岡の銭湯は初めてなので、ちょっと緊張しつつ、衝立ての向こうののれんをくぐりました。(写真は営業前)

番台に座るのは50代後半〜60代前半と思しきおかみさん。「お願いします」と千円札を渡すと、670円のお釣り。ということは料金は330円。名古屋に比べると安さを感じます。
靴を脱いで下駄箱に目をやると、建物に比べ明らかに古いですね。
木の鍵を抜くとロックが掛かるタイプです。菱形に開けられた窓で使用中か否かが判るようになっています。

脱衣所は昭和40年代テイストなのですが、板張りの天井の色がどことなくログハウスを思わせ、私が訪れたどの銭湯とも異なる印象を受けます。
ロッカーは合板の新しいものながら、中央にガラスがはめこまれた名古屋周辺とはまた違ったもの。向かって右側の数個は、通常に比べて縦長の大容量タイプ。下段は常連さんの洗面器置き場となっています。
そして女湯側との仕切、鏡の下には石鹸ケースが置けるように仕切られた棚。洗面器の中に入れておけばよいと思うのですが、独立して設けられています。パステルカラーの石鹸入れが並ぶ姿がカワイイ。
ちょうど番台はご主人にチェンジ。

時間は午後4時すぎ。こちらは3時からの営業なので、開店直後の混雑がまだ残っている様子。サッシの向こうの浴室には多くの人影が見えます。
浴室に入ると、やっぱり結構な混雑ぶり。女湯との仕切側の壁に3つ、突き当たりの2つの浴槽に挟まれて2つ、外側の壁に7つ設けられたカランの多くが埋まっています。反面、湯船は空いているので、とりあえずさっと身体を流して湯に浸かって待つことにします。
浴槽は、女湯との仕切に沿って、手前からジェットと白湯、白湯と向かい合った外側の壁側に入浴剤入りのデンキという配置。浴槽のタイルは、側面や床は水色の長方形タイル、やさしいカーブの上面は赤色の真四角なタイルが張られています。おそらくこの建物が出来て以来のオリジナルでしょう。
そして特筆すべきは、帆かけ船が浮かんだ湖の奥に富士山が聳える構図の見事なモザイクタイル絵。それも白湯の背面、女湯との仕切から奥に掛けて曲面を描く壁に描かれています。これなら、どの浴槽に入っていても富士山が望めますね。
お湯は結構熱め。初めは1日外を歩いて手足が冷えているからかな?と思いましたが、やっぱり熱い。水で埋めながら浸かったり、へりに座ってカランが空くのを待ちました。
そうこうするうちに多くのお客さんが上がられて、やっと空いてきました。どうやらピークは過ぎたよう。私もカランの前に陣取ります。白ケロリン桶にお湯を注ぐと…ここも熱い! 水とお湯を1:1くらいでブレンドしてちょうどいい感じ。シャワーもやばいか?と恐る恐るハンドルを回しましたが、こちらはバッチリな温度設定。あー、よかった…

外は寒いので、もう一度よく暖まってから、さて上がりのドリンク。ファイブミニ、オロナミン、パック飲料など結構豊富な品揃えの中から牛乳を選んで戴きます。明治牛乳110円。プラキャップの軽量ビンのヤツです。なんか最近上がりはフツーの牛乳がマイブームとなりつつありますねえ。
ご主人にお話しを伺うと、こちらは詳しくはわからないものの、80〜90年くらい前からの営業で、今の建物になったのは昭和43年。実は脱衣所や浴室、トイレなどの建材などがちょうど同じ頃に新築した岐阜の祖母の家に似ているなあと感じていたので、なるほどと納得。
「料金が330円というのは安いですねえ」と伺うと、「設備も古いし、何も特別なものはないからねえ。それに数十円の違いでも、お客さんにしてみると毎日だとやっぱり違うから。静岡でも東の方に行くと、もう少し高い値段でやっとると聞いとるけども」
また、冨士山のタイル絵は、「やっぱり静岡だし、富士山のカタチは末広がりの「八」の字で、縁起がイイからね」
ここで目に付いたのは番台すぐ脇の仕切りに貼り出されていた新聞(静岡新聞11月18日付)。ちょっと前に富士山をテーマにした広告が特集され、「ウチはボロいから断ったんだけどね、長いことかけて撮っていかれたよ」「こないだはテレビも来てね、2時間くらい掛けて撮っていかれたけど、映ったのは30秒くらいだったね」

いろいろお話しを聞かせていただいて、すっかり長居してしまいました。ありがとうございました。
「光輪湯」さん、いいお湯でした。

PHOTO:Ricoh GR-digital+GW-1 2006/12/03
テーマ:レトロを巡る旅 - ジャンル:旅行
- 2006/12/16(土) 22:04:11|
- 静岡県浜松市
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おぉ懐かしい下駄箱ですね。うちは祖父がこだわりを持っていたので檜の風呂(といっても豪華なものではなく戦後復旧したタイプのものです)だった為、何年かに一度は風呂を交換しなければいけなかったわけです。そうするとその交換工事の期間だけ銭湯へ行くという、いわば僕にとって銭湯はちょとした特別な場所(?)でした。その当時一番気に入ったのがこの鍵付の下駄箱。好きな番号があいていた時は大喜びした事を思い出しました。
そういえば銭湯のお湯、湯船のお湯も蛇口のお湯も無茶苦茶熱いですよね。子供心に肌に刺さるような熱い湯船のお湯の温度に対し「べらんめぇ〜江戸っ子(といっても山の手っ子ですが)にだって熱いもんは熱いやい!」と思ったものでした^^。
- 2006/12/17(日) 00:01:13 |
- URL |
- buck #zu7n1vHY
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こんにちは。
ありがとうございます。
「お気に入りの番号」、誰にもやっぱりありますよね。
私の場合、「13」がそうです。空いていると「なんだかいいことありそう」な気分になります。
東京近辺はお湯が熱いとよく聞きますね。名古屋近辺では、それほど熱いところはないのかな。岐阜の笠松の「玉川湯」さんがめちゃ熱かったですが、その日だけのようですし。それ以外は「いいお湯」ばかりで、気持ちよく入らせて戴いてます。
でも未だに「デンキ湯」は苦手です。お年寄りが気持ちよさそうに入っているのを見るとウラヤマシイ気持ちになります。
- 2006/12/18(月) 11:13:59 |
- URL |
- Nobu #mQop/nM.
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初めてお便りいたします。
先日自宅のユニットバスが壊れ、市内の安価な銭湯を探そうとネットで検索しておりました所、貴サイトに辿り着きました。
タイトルに目を奪われ、クリックしながら読み進める内、痛く感激。早速筆を執ったような次第です。
小生、予てより市井の建物、昭和の名残が消えつつあるのを寂しく思っておりました。目の前にあった建物も何時の間にか取り壊され、いまや記憶の中でしか再会する事が出来なくなってしまう事もしばしば。単なるノスタルジーや傍観者の戯言だと言われてしまえばそれまでですが、時代の変遷と共に思い出深き建物が失われてゆくのは、思い出までもが削り取られるようで寂しい限り。特に何の文化財でもないが建物が、いや文化財でないからこそ、生活の息吹を感じさせる物が、急速なスピードで身の回りから姿を消してゆくのを少しでも留め置くことは出来ないものかと、日々愚考しております。
この所、昭和レトロブームとでも言うのでしょうか、ホーロー看板や一昔前のポスターを掲げたイマドキの居酒屋をよく目にします。
しかし複製品や擬似レトロが出回る今だからこそ、今もって尚、生きたままの本物に価値があるような気がします。
長々と書き連ねてしまい申し訳ありません。
今後とも、貴サイトが続くことを祈念致しております。
敬具
- 2007/08/18(土) 08:58:50 |
- URL |
- 浜松の痴者 #-
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ありがとうございます。
私も初めは宿場町の町並みや著名な近代建築に興味が向いていたのですが、
最近では遊郭・赤線跡や銭湯、名もない民家など保存もされずに人知れず消え去っていくものがとても愛おしくて、写真に収めるようになりました。
そういった物件には、仰る通り本物の迫力のようなものを感じずにいられません。
私としては浜松はほとんど接点のない町だったのですが、千歳町付近の歓楽街やサッポロ街などが特に印象深かったです。
サッポロ街やもう1軒の銭湯も改めて歩いてみたいと思っています。
- 2007/08/20(月) 10:22:26 |
- URL |
- Nobu #mQop/nM.
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